スティーブ・ジョブズ (伝記) [書]
出生の部分については非常に内容の濃いものである。これは彼のルーツであり、その後の人生すべてに通じる部分、ある種トラウマと言っていいものが根底に流れている。
8月のCEO辞任にも触れるなど本当に直前まで述べられている。それでいて、このタイミングで世界同時発売だから著者、翻訳者および出版社など関係者の努力も素晴らしい。
本書の最初と最後にはこの本を出版する本人の意図が語られている。
自分の子供に自分のことを知ってもらいたいからだと。
決して良いところだけではなく、悪い面も述べられている。むしろ悪い面が多いと感じる。
決して彼は人間的に優れているわけではないのは多くの人に知られているが、世界を変える製品を次々と作り出すその想いの強さは常人を超えている。だからこそなしえたのだと思う。
しかし、知って欲しいとはいえ、言いたくないこともあるのが普通だと思う。けれどそうしないのは彼のスタンフォードでの有名なスピーチにもあるように死を前にしたら恥ずかしいとかプライドとかそういったものは些事なのだろう。自分の言葉どおりに行動したと言える。
本書は本当に多くの人の言葉を集めている。スティーブの言葉をそのまま載せるだけでなく、ちゃんと裏を取っている。こうした地道な作業が重なり、信頼性を高めている。あえて彼の家族とくに子どもたちの言葉が少ないのはスティーブの意図を汲んでのことだと思う。
アイコンではない、人間スティーブジョブズを表した素晴らしい伝記である。
歴史に残る人物と同時代に生きた喜びと彼の生み出した数々の製品に触れられた事に改めて感謝。
合掌。
コメント 0